「どういう了見なんだ?三文字以内で説明しろ。」
 いかにも不機嫌ですって顔でそういうのは、俺の目の前で仁王立ちしている政宗だ。
 すべての部屋の戦利品の値段付けが終わって、成実と一緒に戦利品を見ながらどういう代物が高いだとか、贋物と本物の違いというのを教えてもらっていた最中、政宗がやってきたのだ。
 休めと命じられていたはずの俺を視認した途端、政宗の片眉がピクリと上がって、今に至る。
 それにしても三文字って説明も何も出来やしないじゃ無いか。あまりに横暴な提案になす術もないが、理由なら何とか言えるだろう。
「暇。」
 だったから、と内心で付け加える。どうだ、三文字以内だぞ!と心の中でガッツポーズをしている俺。政宗といえば、本当に三文字以内で答えるとは思っていなかったらしく、暫く目をぱちくりとさせていた。
 そんなやり取りを見ていた成実が、耐えられないと言うようにブハッと吹き出すと、火の付いたように笑い出した。
「凄!!まさか本当に三文字以内で言い返すとか、俺絶対に無理なんだけど!」
 まして不機嫌な梵に対してなんて、と言葉を続け、両腕で腹を抱えると成実はヒーヒー言いながら床に沈んでいった。どうやらツボに入ったらしく、それでもまだ笑うのが止まらない成実に呆れの表情を浮かべながら政宗を見やると、政宗も俺と同じように顔になっていた辺り、どうやら苛立ちも一気に失せたらしく、眉間の皺がなくなっていた。
「暇、な。休憩ってのは楽しむモンじゃねぇ、暇で当然だろうが。」
 溜息混じりに言い放つと、政宗は床に転がっていた成実の背に軽く蹴りを入れて再び溜息をつく。
「売っ払って良いのだけrist upしたんなら、黒脛組に頼んで長曾我部に手紙出しとけ。もきちんとやす」
「長曾我部!?」
 休め、と続くんだっただろう言葉を遮ったのは、思わず叫んでしまった俺の声だった。まさかここで長曾我部の名前を聞くとは思わなかった、不意打ちって奴だ。
「Ah…知り合いか?」
 突然の叫びにキーンとしたのだろう耳を押さえながら、政宗が問いかける。
「いや、一方的に俺が知ってるだけなんだけどな。」
 それは長曾我部に限った事じゃ無い。この世界の名だたる武将は全員知っているはずだ。プレイキャラはすべて網羅しているし、何度もゲームをやったお陰で勢力図も大体ならわかる。
 とはいっても、畠山氏の一件やいつきが一応政宗の支配下だったとか…俺の知識とはちょっと食い違うところもあるらしいが。
「ウチと長曾我部とは同盟国なんだよー。」
 漸く笑いのふちから生還した成実が、床に寝転がったまま首だけをもたげて話しに参戦する。
 東北と四国で同盟だなんて随分と遠い相手なんだとおもっていると、そんな俺の頭の中を見抜いたように成実が言葉を付け加えた。
「今から四ヶ月くらい前に『宝探し』だーって奥州に殴りこみに来た時、梵と気が会ったみたいでさ。戦だったはずがいつの間にか宴会になっちゃって。」
 どんなノリだ。
 この時代の戦ってモノは、対畠山戦のときに経験した程度だけど、あのノリから宴会?どうしたらそんな風になるんだか。
 それだけ政宗と元親の気が合ったのだろうと無理矢理結論付けてみるが、正直微妙だ。
「おしゃべりはそれ位にしろよお前ら。Masterの命だ、とっとと自分のやるべき事をやりやがれ。」
 一向に起きる様子の無い成実に痺れを切らしたのか政宗がそう言い放つ。命といわれれば仕方が無いというように、成実が床からのっそりと起き上がった。
「わかったよ。じゃあ俺は長曾我部の兄サンに連絡とかやっとくんで。」
 ピシッと姿勢良く立ち上がると成実はおどけたように礼をする。そして天上に潜んでいた黒脛組を呼び出して文の手配をし始める。
 それを確認してから政宗は次は俺だと言うように体をこちらへと向けた。
「大人しく休め…って事か?」
「All light.聞き分けのイイコは好きだぜ?」
 冗談めかされるがここで拒絶したら力ずくでも布団にねじ込まれるんじゃないかというほどの極悪な笑み。でも俺は否とは言わなかった。それが初戦を遂げた俺に対する政宗なりの気遣いだと、何となく知っているからだ。
 そのまんま自分の部屋へ向かおうとする俺の背に声がかけられる。
「あのさ、アレ、政宗に渡してくれないかな?」
 アレって何だよ、そういおうとして振り返り、成実の顔を見て理解した。輝宗って人の話をしている時の、どこか懐かしむような表情。きっとあの扇の事なんだろう。
 一人話しに置いていかれた政宗は、俺と成実を交互に見やる。
「わかった、ちゃんと渡しとく。」
「頼んだ!」
 成実は冗談めかしてそういったけど、本当は自分で渡したかったんじゃないかと思う。それでもあえて俺にその役目を譲った理由は今一つ理解できないが。
「じゃあ政宗はこっちな。」
 先導するように廊下を歩けば、一体何を渡されるのかも何処に連れて行かれるのかもわからない政宗が、しぶしぶと言ったように少し遅れてついてくる。