「随分手馴れてんだな。」
人に服を着させるなんて、この時代は普通の事なんだろうか。手早い着付けに適度な締め方。中々に手馴れていると思うのは当然だろう。
俺の言葉に小十郎はフンと小さく自慢げに鼻で笑った。
「政宗様のお着替えは俺が手伝っているからな。」
小十郎にとって、一番大切な主の仕事を任されているというのは、とても名誉な事なんだろう。例えそれが着替えであっても、とんでもない雑用であっても構わないに違いない。
とはいえ、そんな自慢そうに言われても全然羨ましくないから。
「できたぞ。随分とまぁ、似合って…るんじゃないか?」
「ちょっ、何だよその間!あと微妙な疑問符!」
そりゃ毎日のように洋服着てた俺にこの服は浮くだろうけど、だからってはっきり言わなくてもいいじゃないかと本気で思う。
「気にするな。本音が出ただけだ。」
気にするに決まってるだろ、この野郎!と声を上げそうになるが、そんな俺に小十郎がニヤニヤと笑いを浮かべているのに気付いて俺は口を噤んだ。
俺の反応を楽しんでるな…とイライラする反面、そんな風にからかえる様な距離感になれたのは嬉しい。
「これから集会場に向かうが、伊達軍は荒くればかりだからな。気をつけろ。」
「気をつけろって…」
問答無用で喧嘩をふっかけてきそうなあのノリにどう気をつけろというのか。どうせこっちが何もしなくたって変ないちゃもんを付けて喧嘩を売ってくるに違いない。
「殴る蹴る投げ飛ばす、お前の好きにしていいが、戦に影響が出るような事はするな。」
喧嘩は前提か!避ける事すらできないんだな。
どうやら伊達軍は俺が思っていた以上に熱血らしい。新入りの俺が一体どうされるのか、何となく理解し始めてきた。
「気ぃつけます。」
先程成実の肩を脱臼させようとしていたのを見られていたし、小十郎にとっては新入りの俺がいびられる事よりも、自分の部下達が痛い目を見る方が心配らしい。
「まぁ頑張る事だな。集会場までは俺が案内する。」
仲良くなれたと思っていたけど、実はまだまだ先は長いみたいだ。
大きな溜息を一つついて、俺はその集会場へと向かった。

