「ありがとうな、小十郎。」
「礼なんざいらねぇよ。ほら、とっとと着替えろ。」
 小十郎はそう言って手に持っている布を広げる。それを見て、それが漸く服だと気付いた。さすがBASARAというべきか、伊達軍の特攻服みたいなものは時代劇とかに出てくるような服とは違い、若干西洋風だった。
 これだったら自分でも着られるかなと思いながらブラウスを脱ぐと、小十郎が驚いたように微かに声を上げた。
「…お前…」
 その声に首を傾げて小十郎を見れば、その目は随分と最近に見た目と同じだった。
「悪かったな、細くて。」
 俺を持ち上げて驚いている時の政宗と同じような目。ケッと内心毒づけば、小十郎はククっと小さく喉で笑う。馬鹿にしたようなニュアンスが含まれたその笑い声に、俺はそのヤクザ顔を軽く睨みつけるが、強面の小十郎に睨まれては一溜まりもなさそうなのですぐに服を脱ぐのに集中する。
 ベルトを外してズボンを下ろすと、下着一枚だ。薄寒い感覚に僅かに肌が粟立つ。
「変な服ばかりだな。」
 小十郎はまじまじと俺の脱ぎ捨てた服や唯一残っている下着を見つめているが、これは新手の羞恥プレイか?
 いや、興味とかそういう部分だとはわかっているが、あまりジロジロ見られて喜ぶ奴なんかいないだろう。それに何より、俺はそんな変態ではない。
「服着るから、貸せよ。」
「どうせ間違えるだけだ。俺がやる。」
 小十郎はそう言うと着物を広げた。袴もどきと合わせになっているのか浴衣なんかより丈が短い。一見すればジャケットのようにも見えるだろう。
 後ろに回った小十郎の持つ着物に袖を通す。両手を通せば小十郎は前に回りこんで襟の辺りを整えようと俺の首筋に手をやる。
 その瞬間、俺は咄嗟に動いてしまっていた。
「…何しやがる。」
 怒りを押し殺した小十郎の声。俺は咄嗟に首に伸びた手を掴んで捻りあげていたのだ。
「ご、ごめん。」
 慌てて手を放すと小十郎はやれやれといったように肩を竦めてから、今度は、襟を治すぞと声をかけてから手を伸ばした。
 その手が襟を掴み、整えていく。そのまま俺の胸の上辺りで重ね、着物のように合わせた。 「お前は、」
 小十郎は合わせを整えて皺のないようにしていきながら、視線を着物に向けたまま口を開く。俺はさっき咄嗟とは言えど結構力を入れて手を掴んでしまった事が頭に残り、小十郎の言葉に僅か身構える。
 それに気付いた小十郎はフッと小さく息を吐くように笑った。
「元の世界では何をやっていた?忍びか?」
「さっきの、怒ってないのか?」
 返答の変わりに問えば小十郎はチラと視線だけをこちらへ向けてから、気にしていないという風に首を横に振り、それから先程の問いを答えるようにと目で促す。
 忍び、といえばやっぱり情報収集に暗殺と言った所か。本当の戦国なら暗殺よりも情報収集の方がメインだったらしいけど、この世界は戦忍びがメインみたいだしなぁ。
 佐助といいかすがといい小太郎といい、情報収集にはあまり向かない忍びばかりだ。だとすれば暗殺者の俺は忍びに当てはまるかもしれない。
「近い、かな。暗殺業だったから。」
「なるほどな、ならその体型も理解できる。」
 やっぱり年の功だな。政宗とは違ってよく理解してる。政宗は戦場の事が自分の知識のメインになりすぎていて、強い奴はでかくてガタイのいい奴って印象が強いんだろう。
 まぁ俺も最初はそうだったな。見た目の印象っていうのは、案外認識を左右するもんだ。
「ちょっと押さえてろ。」
 合わせが終わるとそう言われ、俺は合わせがずれない様にと着物を押さえる。その間に小十郎は袴に似たパンツに近いものを広げてから俺の足元に屈む。
 凄ぇ。今、小十郎が俺に跪いてる!
「足通せ。」
 俺の結構失礼な考えに勿論小十郎は気付かない。気付かれたらそれこそ怒られる。
 という訳で俺はそんな事を考えているなんて顔にも出さず、促されるまま袴もどきに足を通した。そのままそれを上に上げられると、かなりハイウエストな感じだ。
 こういうの履くと足が長く見えるな。…見えるだけだけど。
「帯、きつくないか?」
 袴もどきを押さえる帯がぐるりと巻かれて締められる。適度なきつさで腹の辺りをキュッと締められ、俺は大丈夫だというように頷いた。