そんな現実逃避をしている合間にも政宗は俺のブレザーのボタンを器用に外していく。
「ちょ、ちょ、ちょーっと待て!待て!落ち着け!」
どうしてボタンの外し方知ってるんだとかそういう突っ込みはこの際多めに見るからよしとして。
「どうして脱がなきゃいけないんデスカ?」
「筋の付きを調べる。俺よりpowerが上回ってたくせにこんな細いなんて有り得ねぇからな。」
あまりのパニック状態に片言になる俺に政宗は大した事がないというようにしれっと言い放つ。うん、まぁ、武士として気になるところなんだろうが、そこには俺に対する配慮とか、俺の感じるであろう羞恥心はすべて無視なのか。
そう思っている間にも政宗はブラウスのボタンをすべて外し終えた。
「お願いだから脱がすなこの変態!どけ!」
高圧的なんだか下手なんだかよくわからない言葉を連呼しながら逃げようとする。が、政宗が至極嬉しそうな顔をして四這いになっていた片膝を、そっと俺の股間へと持っていった。いつもとは違う爽やかな笑みに背筋が凍りつく。
「潰されたくなきゃ大人しくしてろ。you see?」
こ、こんのサディストォォ!ってか男の最大の弱点をつくとはなんて卑怯なんだ、見損なったぞ政宗!
「あぁでもこれじゃ足の方見れねぇな。しゃあねぇから今日は上だけでいいぜ。」
今日は?じゃあ明日も明後日もこんな羞恥プレイが待ちわびている訳なのか。人権も何もねぇな伊達軍は!ってかこの筆頭は!!
と大声で怒鳴りつけてやろうかと思ったけど大事な部分を潰される訳にもいかず、俺は大人しくする事にした。上半身だけなら別にいいという感覚もあったし。
ただ、もしこれが次回もあったらその時は悪いけど固有技とか特殊能力を惜しみなく使わせてもらうけどな。
「筋はまぁついている方か。着痩せするtypeなんだな。…でもそれにしても少なすぎる。」
ブラウスを左右に限界まで広げられ、肩の部分やわき腹の辺りまでくまなく観察される。ぺたぺたと掌が俺の胴体を確かめるように何度も触っていく感覚がゾワゾワして気持ち悪いから、この検分が早く終わるように俺は祈っていた。
丁度そんな時、大きな足音が駆け足でこちらに近付いてくるのが聞こえてきた。それは迷わずこちらへと向かってくる。
「成実ふっかーつ!!」
スッパーンという音と共に勢い良く襖が開く。名乗りの通り、廊下には成実が立ってこちらを見つめていた。それはもう、その目玉が落ちるんじゃないかと思う程目を見開いたまま。
「あぁ成実nice timingだ、ちょっと手伝え。」
政宗の言葉に成実はさっきのサディストぶりとは打って変わって何かに怯えた様子で後ろへ数歩後ずさる。てっきりウキウキと参戦するのかと思っていた俺はほっと息をついたがそれもつかの間だった。
「梵が、梵がー!」
何故か叫ぶ成実。とりあえずこいつの鼓膜を破らんばかりの大音量をどうにかしないとと思っていると、そこに小十郎が駆けつけた。そして俺達を見るなり成実と同じくその場に立ち止まる。
俺の頭の中で、この二人がもしかしてとんでもない勘違いをしているのでは無いだろうか、というそんな仮定が颯爽と走り抜けた。
「政宗様…何をしておいでですか?」
自制心とか冷静さとかそれらを必死にかき集めて小十郎が問いかけてくる。うん、その目からしてどういう勘違いをしているかは検討がついた。まぁ戦国時代にそういうのがあるとは知っていたし、男色が武士の嗜みみたいなもんになってるってのも知ってたけど。
俺、そんな趣味ないから。
「お前らはこれが何に見えてるんだ?」
政宗も二人の勘違いに気付いたらしくやれやれというように溜息をつく。でも一番溜息をつきたいのはこの俺だ。
「梵、全部言わなくていいよ。…まさか、そんなに女に飢えてるなんて…」
「違うからな。」
「政宗様、正式な小姓をお呼びすればいいのになぜその様などこの者とも知らぬ輩を…」
「だから違うって言ってんだろうが!」
その後、俺達がどうしてこうなったのか二人を説得する為に尽力したのは、言うまでもない。

