「何で人間なんて拾ってくるんだよ!俺はてっきり可愛い動物か何かだと思ったのに!!」
 この間拾ったウリ坊みたいな、丸っこくてちっちゃい奴が俺は好きなんだっ!!と、政宗によく似た顔で熱弁するその男。とりあえず、あんまりマトモな奴じゃなさそうだというのは大体わかった。
「Shit,てめぇを楽しませる為に拾ってる訳じゃねぇ!」
 その腕を無理矢理引き剥がす政宗。体格は赤毛のお兄さんの方が若干大きめだ。
「あ、あのさ…あの人、誰?」
 とりあえず、この中で唯一マトモそうな小十郎に近付くとこっそり問いかける。俺達の目の前では政宗と赤毛のお兄さんとの喧嘩が繰り広げられているが、まぁ放っておこう。
 俺の問い掛けに溜息を一つついて小十郎が俺に耳打ちする。
「政宗様の従兄弟、成実だ。」
「あー、さっき話しに出てた人か。」
 この赤毛のお兄さんは政宗の従兄弟だったのか。それにしちゃ結構似ているが…まぁ、遺伝子の神秘って奴なんだろうな。
「あとさ、ボンって何?」
 さっきお兄さんが口にしていた言葉。言葉の前後関係からして政宗の事なんだろうけど、どこをどうしたらボンって呼び名になっちゃうんだ?あだ名なのか?
「ボン…?あぁ、そりゃ政宗様の事だ。幼名が梵天丸様だったからな。」
 なるほど、なるほど。この時代の人って幼名って言うのがあるんだったよな。名前なんて一つありゃ十分だろうに、面倒な事が好きなんだなぁ。
「あーぁー…」
「用は済んだだろ、とっとと出てけ!Now!!」
 あからさまに落胆している成実を無理矢理部屋の外に押し出すと、政宗は後ろ手に戸を閉めてから大きく溜息をついてから俺を見た。
「…何仲良くしてんだ、お前ら。」
 言葉に首を傾げれば、なるほどさっきの耳打ちのままの体勢だった。
「仲良しになったんだよなー?小十郎。」
 まぁその場のノリっていうか、そんな感じで近い状態のまま笑いかければ小十郎があからさまに戸惑った表情を見せる。政宗はというとそんな俺を小十郎から文字通り引っぺがして俺の顔を至近距離で睨みつけてきた。
「あんま調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
 調子乗るっていうか、これが俺の素なんだけどなぁ。やっぱりチャラチャラしているように見えるんだろうけどさ、誰とでも仲良くなれますっていうのが自分の長所なんだけど。
「お前を拾ったのは俺だ。だから今日からお前は俺の所有物だ。無駄な言動は控えろ。わかったな?」
 お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。なんて、そんな幻聴すら聞こえてきそうな俺様発言に俺は小さく溜息をつく。そしてゲームの中の政宗を真似て皮肉を口にした。
「人を自分の思い通りにしようだなんて、Coolじゃないなぁ。」
「なんだと?」
 反論した俺に政宗の鋭い眼光が突き刺さる。真正面から受け止めるには結構キツイその視線に目を逸らしてしまいそうになるのを抑えると俺はその隻眼を見据えた。
 一瞬だけお互いの瞳と瞳が交じり合い、同化する様な感覚に陥る、深い金色。片目でこんなに眼力があるんだから、もし両方の目があったら俺、気迫で負けてたと思う。
「あんたが偉い奴だろうが何だろうが、俺は俺の物だ。…あんたのものじゃ無い。」
 暗殺の仕事についても、偉い奴に何を言われても、俺は俺の好きな事しかしてこなかった。それはいつだって変わらない俺の中の絶対的なスタンス。それを崩しちまえばきっと俺の中枢を形成する何かが崩れてしまう。だから。
「服従なんて絶対しねーから、よろしく。」
 犬歯を出すようにニィっと笑ってやれば、政宗の眼光はそのまま俺の喉笛に噛み付くんじゃないかってくらいに強くなって、そしてフッとその色を変えた。興味に光る子供の目から、プライドの高い竜の眼に。
 そしてそのまま俺を畳にうつ伏せに押し倒してマウントポジションを取る。首根っこを掴まれたまま力任せに押し倒されたもんだから顔が畳に擦れて地味に痛い。
「あんた滅茶苦茶Coolだな…気に入ったぜ。」
 俺の首根っこをぎゅっと掴んでいたその手が放され、それと同じくらいに頭をぐぃっと掴まれて後ろを向かされる。無理矢理動かされて首が痛い。
 その一部始終をハラハラとした様子で小十郎が見ていた。突然の暴挙に出た政宗が心配だというのが殆どで、畳に頬ずりさせられている被害者の俺には一瞥すらくれないなんて…。
 この親バカが!お前、過保護すぎなんだよ。いつもいつも開口一番政宗様じゃねぇか、こんちくしょう。政宗の傍に居て羨ましいなんてこれっぽっちも思ってなんかないんだからな!
「よし、小十郎。」
 突然名前を呼ばれて小十郎が姿勢を正す。先程までのハラハラはどこへやら、凛とした雰囲気を纏った。気付けば政宗も同じように凛とした空気を纏っている。
「こいつを伊達軍に入れる。俺の直属の部下だ。」
 瞳の中に僅かに見える大人の策略。