政宗と小十郎しか使えない技を使ったんだ、外国にも目を向ける興味の塊のような政宗の好奇心を思いっきりくすぐってしまったんだろう。
「ひ弱なんかじゃねぇって。こいつは強いぜ。」
 返答を聞いた途端、特に最後の強いという単語を聞いた途端、小十郎が俺の襟首をキュッと掴んで目の前に持って行き、じっくりと観察する。俺はこいつらと違って一般人だからそんなに筋肉だってついてなきゃガタイも良くない。まぁ唯一一般と違うところは暗殺を生業にしている事だけど…暗殺って言うのは相手の隙を見つけて必要最低限の力で殺す技術が一番必要とされている。だから見た目は殆ど一般の男子と変わらない。
「こんな奴が…?」
 疑り深い小十郎に政宗が肩をすくめた。
「ま、疑うのも無理はねぇな。詳しい話は後だ、軍を退くぞ。」
「はい。」
 恭しく頭を垂れる小十郎は俺を掴んでいた手を放して自分が乗ってきた馬の元へ行くと、そいつを政宗の元へと持っていった。
「これをお使い下さい。」
 戦の後の政宗を労わって馬を差し出す小十郎。しかし政宗は首を横に振った。
「さっきのほら貝で全員本陣へと集まってるはずだ。ここから本陣まではそんな遠くねぇ…歩いていきゃいいだろ。」
 小十郎だけを歩かせはしないという感じの表現が言葉の端に滲んでいる。お互いにお互いを思いやってるんだなぁ、あんな悪役的な主従なのに。
 小十郎は強面だし、政宗は言葉の端々がサディスティックだし。主人公キャラというよりは…なぁ。
「わかりましたが、少し急がねばなりません。皆が政宗様のご帰還をお待ちしております。」
「OK.わかってるぜ。あいつらに心配はかけたくねぇしな。」
 昔の青春ドラマさながらに、夕日に向かってダッシュしそうな主従を見つめながら俺は首をひねった。
 これってさ、脳内麻薬の見せた幻覚にしては随分長くないか?
「さ、いくぞ。」
 政宗が俺の手を引く。そのままグラリとバランスを崩して倒れていく体をどこか他人事のように感じながら、慌てて体を支える政宗の腕の中に納まる自分。
「…っ!?どうした!?」
 慌てた政宗の声に俺は目を閉じる。
「もう…だめだ…」
「しっかりしろ、おい!」
 必死な政宗の声を遠くに聞きながら俺は首を横に振る。
「もう…眠い。」
 卒業式が楽しみで寝られなかったなんてそんな小学生並みのことをやらかしていたせいで、睡魔が猛烈な勢いで襲ってきた。もう駄目だ、俺は睡魔に抗う術なんて知らない。意識が睡魔にのっとられていく。
 必死に睡魔と格闘している俺の耳に、呆れたような溜息が二人分聞こえて、そのまま意識が途切れた。