戸惑う俺はただただぼーっと突っ立っているのみだった。その隙に政宗は俺から離れて構えに戻る。
「てめぇ…手加減なんてすんじゃねぇ…」
 手加減とかそれ以前の問題だったんだけど、どうやら俺がわざと攻撃を加えなかったのだと誤解しているようだ。いや、そんなつもりはなかったんだけどな、なんて心の中で弁解するも意味はなく。
 プライドの高い政宗の怒りをかった俺はかの有名な六爪流を見る事になってしまった。
「Ya-ha!」
 三本の爪が俺の目の前を過ぎる。雷の閃光に目がくらむがここで怯めばやられるのは目に見えている。俺は素早く後ろに回避して間合いをあけて刀を構えた。
「やっぱり格好いいよなぁー…うん、俺、あんたと戦いたい。」
 スッと目を細める政宗。俺の雰囲気が変わったのに気付いたのだろう。怒りがふぅっと凪いで行くのがわかった。
「最初っからそうすりゃいいんだよ。…あんた、ちっとは楽しめそうだ。」
 俺達は互いににらみ合ったまま動かなくなった。互いに互いの出方を見極めようとしている。もしそれを読み違えれば、そいつが死ぬ。
 一瞬、風が僅かに変わる。それがまるで合図のように俺と政宗はほぼ同時に動いた。互いに攻撃の為に振りかざされた刀と刀がぶつかり合い、ギャンと吠える。
 受け流しただけで手が軽く痺れる位の力強さに俺は笑みを浮かべていた。
「すっげぇ。手がびりびりする。」
 でも六爪状態の政宗の攻撃を受け流せるなんて何が何でもありえないだろう。俺は暗殺者で確かに戦いには特化しているけどこんな人間離れした奴と対等に渡り合えるほどじゃ無い。なのに、政宗と同等、いやそれ以上の力を持っている…。
 俺に有利になるように世界が構築されているんだな。幻覚だし。…って事はもしかして、アレもできるかもって事か!?
 俺はあるキャラの動きを思い出しながら構えを上段へと変える。途端に刀に雷がまとわりついてバチバチと音を立て始めた。
「せいっ!!」
 掛け声と共に刀を振り下ろすと、雷が大地を裂きながら政宗へと向かう。それを間一髪で避けると政宗は呆気に取られた顔で俺を見た。
「今のは…っ!?」
 そう、今のは伊達軍のオープニングムービーで政宗と小十郎が最後に使ったあの技だ。俺の刀は一本だから必然的に小十郎の技になる訳だけれど。
 まさか自分と小十郎以外の奴がこの技を使えるなんて思っていなかったのだろう、政宗のぽかんとした表情は尚も続いている。それでも男前なのがむかつくんだよなー。と内心ムッとしていたその時だった。
「うおぉぉっ!!政宗殿ぅぉ…!!」
 遠くから聞こえる雄叫び。一体誰だ?何て思う訳もない。こんな叫び方をする奴はこのゲームの中に一人。虎の若子、真田幸村だ。姿を見なくてもわかるって事は、これこそまさに遠からん者は音にも聞けってやつか。
 ドドド…と声のした方から土煙が上がって赤い何かが突進してくる。それは猛スピードでこっちに来て、政宗へと二本槍の切っ先を振るった。
 俺の事は全く眼中にないのかその目は政宗に向けられたまま少しも動こうとしない。
「小十郎はどうした?」
「佐助と戦っておりまする。さすればこの戦い、某と政宗殿との一騎打ち!」
 いやいや、俺もいるんだけどな。
 政宗も俺の存在をチラチラと目で確認している。明らかに一騎打ちじゃねぇだろって顔をしているが幸村は全くといって気付いていない様子だった。
 実はわかってやってるんじゃないだろうかと思う程の無視に俺は溜息をついて二人から離れ、近くの木に背をついて座り込んだ。
 どうやら政宗は幸村よりも俺の方が気になるらしい。不審者だというのもあるし、さっきの戦いがお流れになった事も関係しているんだろうけど。
「いざ、勝負っ!!」
 無駄に元気な声が響くと同時に蒼紅一騎打ちが始まった。やっぱり生で見ると迫力が違うな、うん。
「頑張れー。」
 のんきに高見の見物と洒落込んでいると、俺の後ろに殺気を感じた。
「誰?俺、今立ち上がるの面倒なんだけど。」
 一度座り込むと立ち上がるのは中々に面倒くさい。だからできれば戦いは無しの方向がいいんだけどなぁ…
「あちゃー…バレちゃった?」
 おどけたような声と共に、俺の後ろの奴が姿を現した。しかもご親切に俺の目の前に来てくれている。迷彩の服に身を包み、腰には大きな手裏剣、忍びにしては目立ちすぎる橙の髪。武田軍の戦忍、猿飛佐助本人だった。
「そんなに殺気出せばバレるって。…で、何の用?」
 佐助は頬を書きながら俺の隣腰を下ろした。
「いや、ほら、うちの旦那があんたの事無視しちゃってたから、お詫びに来たんだよ。」
 気さくな笑顔でそういわれるが、目が笑っていない。それにその手、さっきから大型の手裏剣のところで止まってるからお詫び目的じゃ無いだろ。明らかに。